人様の商品やサービスの価格を見て「高すぎ! 自分ならもっと安く提供できる!」と目くじらを立てる人がいます。
もし、その「高いサービス」がぼったくりなら話はわかります。
でも、高いサービスなのにお客さんが喜んでいるようなら、価格だけで評価するのはやめたほうが身のためです。
商品やサービスを価格だけでしか評価できないと、あなたの価値が下がってしまうから…。
価格でモノの価値を評価すると陥る罠
「価格」を判断基準にすると、モノの価値がわからなくなります。
たとえば「5,000円以上のモノは高い」としましょう。で、以下のサービスを買います。
- トイレの水漏れの修理を頼んだら5,000円だった。
- ケータイの機種変更にかかるお金が5,000円だった。
……うん、高いですね。
じゃあ、この場合は?
- あなたの大好きなバンドがあなたの誕生日を祝うために、はるばる会いに来て5,000円でリクエスト曲を歌ってくれた。
- 他のパソコン教室では教えてもらえないようなことを、最近通い始めたマンツーマン教室では5,000円で手取り足取り詳しく教えてもらった。
- モデルの人たちとの合コンに参加した。会費は5,000円だった。
……こうなると同じ5,000円でも「高い」と言いにくくなります。
とまあ、商品やサービスというのは、価格だけで高いか安いか決められるものじゃないのです。お客さんがどう感じるか、ですから。
この原則を踏まえて「人様の商品やサービスより自分のほうが安くできる!」を実行しちゃうと、いろいろと悪いことが起きますよー、という話に入ります。
「自分のほうが安く提供できる」を実行すると起こる3つの悪いこと
なにかを売るとき、安さに走るとこんな悪いことが起きます。
- 収入が減る
- 自分の時間が減る
- 子どもたちが夢を叶えられなくなる危険性も出てくる
悪いこと1. 収入が減る
当たり前ですけど……価格を下げる→利益(収入)が少なくなる、です。
もし、私たちが飲まず食わずで動けるロボットで、電気もガスも水道も家も必要なくて、とくに欲しいものも無いなら、商品の価格を思う存分下げても問題ありません。なんでも無料でやったらいいと思います。
ただし、安さをウリにすると「安いから」という理由で来るお客さんばかりになります。
「あなただからお願いしたい」ではなく、「安いから」です。そういうお客さんに囲まれたいなら、安くやっていいでしょう。
やってみるとわかりますが、「安いから」という理由で選ばれるとけっこうむなしいです。
ちゃんと現実を見てる人なら、生きるにはご飯が必要で、電気もガスも水道も住む家も必要で、生活用品や仕事道具や嗜好品も必要とわかってます。家族がいたら家族の分も必要になることも。
自分や家族を守るためにお金は必要です。それでも「安く提供できる!」と言える人の意見は変わらないのでしょうか?
お金を得ることは悪いことじゃないです。生きるのに必要なんだから。水や空気と同じ。
悪いこと2. 自分の時間が減る
商品を安くしたぶん、多くのお客さんを相手にしないといけません。薄利多売です。
生活に十分なお金を得るために労働時間も長くします。
すると、自由な時間、趣味の時間、家族との時間、睡眠時間……がなくなります。
お金では買えない大切な時間を削って削って、やっとこさ手に入るのが「仕事と家族どっちが大事なの!?」というドラマみたいな家族からの詰問です。
悪いこと3. 子どもたちが夢を叶えられなくなる危険性も出てくる
上の2つは自分や家族に起こることでした。3つ目は違います。もっと広い範囲、業界の話です。
わかりやすいところで「イラストレーター」を挙げます。
ピクシブなど絵の投稿サイトを見ると、絵の上手な人が多いですね。うっとり見入っちゃう絵もたくさんあります。彼らはイラストレーターの卵と言えます。
そんな彼らに絵の依頼をすると高確率でこんな返事が……。
「趣味でやってるので無料で描きますよ」
オーマイガー。
「趣味だから無料で」と言いたくなるのは分かりますけど、ぜひ堂々とお金を受け取ってほしいです。
趣味でやってるとか、仕事でやってるとか、関係ありません。その技術は立派なもの、価値あるものなんだから!
無料で習得したものじゃないでしょ? たくさんの失敗を乗り越えてきたでしょ? 世界の発明家並の試行錯誤があってこその今でしょ? それらは価値あるものです。
技術習得にかけた時間や自身に対しての価値は認めてほしいなー、と私は思います。
私も知人の女性にイラストを頼んだことがあります。会社の業務で絵を描く彼女ですから、技術はプロです。
お願いしたのはたった1個の小さなロゴ。会社が休みの日にコツコツと描いてもらい、完成までに1ヶ月ほど、試作品を何十回も重ねて完成しました。
いざ報酬を支払うとなったとき、彼女は言いました。「2,000円でいい」と。
冗談じゃない、と私は勝手に5,000円を振り込みました。彼女の技術は2,000円レベルじゃないからです。貴重な休日も使ってもらったわけですし。
こんなふうに、自分の価値を低くつける人は多いです。
価値を低くつけるとどんなことが起こるのでしょうか。
素晴らしい価値を低価格で提供してしまったら、後輩が参入しにくくなります。「先輩がその質で提供するなら、自分はもっと安く提供しなきゃ悪い」と考えちゃうから。
先輩として「低価格」の席は早く譲りましょう。
また、高レベルの人たちがずっと低価格で仕事をしてしまうと、業界も「そんな報酬でいいのね」と染まってしまいます。
結果、素晴らしい技術をもつ人たちが安い報酬で使われ、その仕事は「ご飯を食べられない仕事」になり、今の子どもたちが「将来なりたい仕事(夢)」にできなくなってしまいます。
安く提供することは、目の前の人を一瞬喜ばせる代わりに、長期的に見れば仕事を仕事でなくしてしまうことだったり、後輩や子どもたちに悪影響を与えてしまったり……という側面もあります。
イラストレーターに限らず、いま仕事をもらえる人たちは少しずつ価格を上げるべきです。無料で受けているなら、思いきって有料にしましょう。最初は安くてもいいから、有料に。あなたには人を喜ばせる価値があるんだから。
そんなわけで、「自分のほうが安く提供できる」を実行すると起こる3つの悪いことを挙げました。
- 収入が減る
- 自分の時間が減る
- 子どもたちが夢を叶えられなくなる危険性も出てくる
「自分のほうが安くできるぜ!」と言っちゃう場合は、上のことを考えての言葉なのか自分の胸に聞いてみてください。
深く考えずに安くすると、後でいろいろ高くつきますぞ……。
自分の価値を低く見ないようにしよう
「安さこそ正義!」と考えることが意外と深刻なこと、感じられたでしょうか。
人様の商品やサービスにあれこれ言いたくなったら、その前に「なんでこの価格でお客さんが集まるのかな」と考え、自分のサービスの価値を上げることに活かしてみてください。
そのほうが幸せになれます^^ 自分も家族も、業界も。
追伸:
だからと言って、「とにかく価格を上げればいい!」って話ではありません。
お客さん目線も考えて「それだけのお金を払う価値がある価格」に設定しましょう。価値の低いものを高値で売ったら、そりゃあ怒られます(汗)