知的活動

なぜ「死ね」という言葉を平気で使う若者が増えたのか

暴力

こんな記事を書く自分に「ああ、口うるさい大人になっちゃったんだなぁ」とイヤになりつつも、「あの言葉」を日常で強制的に聞かされるのはもっとイヤなので、私の思いと考察を書いておきます。

私が先日、ファミレスにいたときのこと。 女子高生2人組が恋バナに花を咲かせてました。
「写真見せてよ〜」
「えー、カッコイイじゃーん」
「あー、イケメンと付き合いたい〜」

大声で話す彼女たちの会話はどうしても聞こえてきてしまいます。
まあ、女子高生ならそんなもの。むしろほのぼのするなぁ。 と、あまり気にしないでいたのですが……。
突然、1人がこんな言葉を発しました。

 

「死ね!」

 

ビックリしました。
なんだ修羅場か!?
もう1人の女子高生がとんでもないことをして、彼女を怒らせてしまったのか!?

と私の脳内でいろんな考えが渦巻いていると、何事もなかったかのように彼女たちは雑談を続けました。

笑いが起きる雑談を見て「私の聞き間違いか……」と思っていると。
また突然、先ほどと同じ彼女が同じ言葉を発しました。

私はもう文字にしたくないので、ここでは「最悪の言葉」として書きます。

 

そう、彼女は雑談の中で何度も「最悪の言葉」を大声で発するのです。
なぜ、彼女は平気で「最悪の言葉」を口にできるのか。
なぜ、言われたほうも笑って雑談を続けられるのか。

彼女が「最悪の言葉」を大声で言うたび、彼女たちと無関係であるはずの私の心は痛みを感じました。
(とんだとばっちりだよ!)

 

なぜ「最悪の言葉」の大安売りは起きた?

必要ないと思いますが、「最悪の言葉」の意味をおさらいしておきましょう。

「最悪の言葉」は、相手の存在を否定する言葉です。
この世から消えてほしいほど憎い相手に向けてぶつける言葉です。
息の根を止めて殺してやりたい、でもできない。そういう場合にも意思表示として使われることもあります。
少なくとも、私の中ではそういう意味です。

言葉の意味が変わるのは時代の流れですが、 「最悪の言葉」の意味も私の知らないうちに変わってしまったのでしょうか。
仲の良い友達にぶつける言葉として、また、言われた側も思わず笑顔になってしまう言葉として、使われるようになったのでしょうか。
……あまり信じたくはありません。

 

彼女たちだけでなく、電車、街中、喫茶店、テレビの中からも 「最悪の言葉」を聞く機会は増えました。
男性たちもよく「●ねよお前」「あはは」と会話しています。

なぜ、このような「最悪の言葉」の大安売りは起きたのでしょうか?

 

若い芸人さんでもツッコミで「最悪の言葉」を使うことがあります。
ボケがなにかやらかし、ツッコミが 「最悪の言葉」を言う。
でも、私のような漫才素人にもわかるほど、面白くないツッコミです。 ツッコミじゃなくて、ただの悪口だから。

ツッコミとは、ボケのおかしな部分を強調して、ハッキリさせて、笑いを増幅させてお客さんに届けるもの。
なのに、ツッコミでただの悪口しか言えないなんて、そんな漫才を残念に思います……。
(テレビも「最悪の言葉」のツッコミにあわせて大笑いのSEを流すため、そんな悪口が評価されているように見えて、なおたちが悪い)

質の悪いツッコミをする芸人さんを若い人たちは真似しているのかもしれませんね。

 

別の原因として思い当たるのは……私はマンガやゲームが大好きです。ヒマさえあれば読んでいます。
だから、マンガを悪く言うのは不本意ですが、考察の一部として思ったことを書きます。

「最悪の言葉」が使われる場面は、昔からマンガやドラマでありました。
登場人物のこれまでの人生や状況、思いなどがいろいろ語られ、ガマンできない怒りや恨みが噴出する場面で、いよいよ髪の毛が逆立ち、目はつり上がり、鬼の形相でドドーンと「最悪の言葉」が発せられます。
主人公や主人公に近い主要人物が使っていた印象があります。

ところが、最近のマンガはぽこぽこ「最悪の言葉」を言っちゃいます。
主人公級の登場人物ではなく、モブキャラ(重要ではない登場人物)も軽々しく小さな文字でよく言ってます。
先ほどの漫才のツッコミのように、会話の中に突然出てくることも。

 

また、デスゲーム系のマンガが増えたこともあり、グロテスクな場面を目にすることも多くなりました。
このジャンルのマンガでは軽々しく人の死が扱われます。
※デスゲーム系のマンガ……突然謎のゲームに参加させられ、登場人物が次々に亡くなるストーリー。体の切断部分や血も描写される。

デスゲーム系のマンガが多いのは、以下の理由から人気になりやすいからです。

  • 過激なシーンが多くて読者の目を惹きやすい
  • 主人公がピンチを乗り越えられるかドキドキの場面を作りやすい
  • デスゲームを仕掛けた人間や組織に関する謎がある (解明されないこともある)

 

私は「最悪の言葉」を使う若い人たちを「現実とマンガの区別がついてない」なんて言いません。頭の堅いおじさんではないので。
現実とマンガの区別がついているから、みんな人殺しはしませんよね。

ただし、現実とマンガの区別はついているものの、「最悪の言葉」を言うことに対する抵抗は少なくなっているのでは? と問いかけたい。
つまり、人殺しまではしないけど、「最悪の言葉」は平気で使っちゃうよね? と。

 

……こんな話をすると「イヤならそういうマンガを見なきゃいいじゃん」と少しズレたツッコミが来ますが、問題はそこじゃありません。
自分がそういうマンガを読まくても、周りの誰かから「最悪の言葉」を聞かされる現状が問題なんじゃないかなぁ、という話で。ファミレスの女子高生なり、漫才で突然出てくる悪口なり。

 

しかし、上で言ったとおり、マンガ好きの私にとってはあまりマンガを悪者にしたくありません。
じゃあ、マンガ以外の原因はなにか? と考えると、思い当たるものが1つあります。

 

人の気持ちを察することができない?

「最悪の言葉」を平気で面と向かって言ったり、ツイッターで見ず知らずの人に対して悪口を言ったり。
相手の気持ちを察することができない人が増えているのではないでしょうか。

だとしたら、原因はなんでしょうね?

「そんな言葉、使うんじゃありません!」と親が叱らないのか。
「それ言われると傷つくんだけど……」と正直に言ってくれる友達がいないのか。
雑談のツッコミや感情表現に使う言葉を「最悪の言葉」以外に知らないのか。
顔の見えないネットでのコミュニケーションが増えたせいなのか。

ちょっとこのあたり、若い人たちに聞いてみたい気もします。

 

もし、「俺バリバリ使ってるけど友達みんな笑ってくれるぜ!」という人がいたら、こう尋ねたい。
「最悪の言葉」を使っても友達が笑ってくれてるとしたら、それ苦笑いじゃないですか? と。

少なくとも、高校生時代の私のグループにいた「最悪の言葉」を使う男子は、友達から苦笑いを買ってました。
彼は友達と仲良く雑談しているようにみえて、遊びに誘ってもらえてなかったです。

 

さいごに。「最悪の言葉」に代わる言葉を使おう

長々と書きましたが、私が言いたいのはたった1つ。

「最悪の言葉」を口にして相手や周りの人を不快にするより、同じ2文字なら「好き」などの良い意味の言葉を使って相手を気持ちよくしたほうよくないですか? ということ。
そのほうが好循環が起きますし。

 

「最悪の言葉」を言うと、集まってくるのは同じ人たちです。
良い言葉を使っていれば、集まってくるのは同じ人たちです。

良い友達に囲まれたいなら、普段の言葉遣いから「相手をどういう気持ちにさせているか?」と気にしてみてはどうでしょうか。

イヤな気持ちにさせてくる人より、一緒にいて楽しい人と友達になりたいでしょ?

 

もう一度言いますけど、「最悪の言葉」は相手の存在を否定する言葉だから……。
この世から消えてほしいほど憎い相手に向けてぶつける言葉です。
そんなことを軽々しく言える人とは私なら近づきたくないなぁ。

と、若い人たちの親御さんにあてたのか、若い人たちにあてたのか、わからないメッセージになっちゃいましたが、「最悪の言葉」に対する私の思いと考察をおわります。

生きている間はせっかくならみんなで気持ちよく過ごせたらいいですね^^

 

追伸:
グループで会話しているとき、誰かが「最悪の言葉」を言った途端、みんなで真顔になれば面白いかもしれない……。

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